<都市交通>LRTは儲かる? (2005.01.15)


新しい交通手段として、LRTが着目されているが、やはり費用の面がネックとなると言えよう。

そこで、何人程度の利用者数があれば費用面のネックが解消できるかについて検討を行う。

試算

本当にLRTは儲からないのだろうか?単純だが、渋谷駅周辺に2〜4kmのLRTが敷設されたと仮設して、試算をしてみよう。

利用者から乗車ごとに運賃をもらうケースを想定する。

(1)利用者数の想定

渋谷駅の一日の乗降客数は、おおよそ220万人
そのうちの約6%の人が利用をしたと想定すると、約13万人。

(2)料金の想定

       料金は、電車の初乗り料金以下の100円と想定。

(3)一日の売上の想定

13万人×100円=1300万円

(4)一年の売上の想定

1300万円×350日=約46億円

加えて、広告収入等で数億円の収入を見込む。

つまり、単純計算ではあるが、渋谷駅周辺のLRTで、おおよそ上記の条件が成立した場合、40〜50億円の売り上げが見込まれる。

なお、LRTの敷設費と車両価格、維持費用などは次のように言われている。

(1)敷設費用

20〜30億円/km(地下鉄 200〜300億円/km のおおよそ1/10と言われている)

(2)運営費用

3億円/km(地下鉄 10億円/km のおおよそ1/3と言われている)

このことから、渋谷駅周辺に2〜4km程度のLRTを走らせる場合、敷設費用までも5〜10年程度で回収可能であり、収益性は充分にあると言えよう。


LRT導入の損益分岐点

上記のケースは、渋谷駅周辺という利用者がも多い地域を想定したものであり、収益性が充分にあってあたりまえである。

そこで、収益性の面からみて、同様に4km程度の路線の場合を想定して、利用者数の下限はどの程度かを試算する。

少なくとも、運営費用をまかなう必要があるため、年間12億円以上の売り上げが必要である。敷設費用も含めると、少なくとも年、15億円以上の売上が必要である。

年15億円の売上を得る場合、上記の試算の条件では、一日の利用者数は、おおよそ4〜5万人必要となる。すなわち、それを下回る場合は、地方自治体等からの援助が必要となり、単独では赤字体質に陥る危険性がある。

すなわち、一日の利用者数が、おおよそ4〜5万人に満たない場合、現状のまま新規にLRTを敷設しても、赤字体質によって失敗することは容易に類推できる。


LRTによって、交通全般の転換を

一日の利用者数が、おおよそ4〜5万人に満たない場合であっても、自動車利用に必要な整備費用(例えば、地方自治体における道路建設や道路の維持管理に必要なコスト)が軽減されるならば、その軽減分をLRT運営の補助とすることで、赤字に陥らない運営が可能である場合もある。

そのためには、これまであまり表に見えなかった、自動車利用に関連して支出した整備費用を算出し、LRTによって削減可能なコストを明確にする必要がある。

また、一日の利用者数の見込みが4〜5万人に満たない都市では、自動車の利用を制限する、自動車の優先度を下げる、LRTへの交通接続点(パークアンドライド)の整備などによって、都市の交通全般のコントロールをして、利用者数を増やすための施策が必要である。逆にいえば、そのような施策なしでは、赤字体質の経営となり、LRTの新規整備が失敗し、悪い前例を作ってしまうだけである。

交通全般のトータルな視点において、国民が本当に「儲かる」ために、自動車促進施策からの転換、特に都市圏の自動車抑制施策へ転換をする必要があると言えよう。


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