【近鉄】加速する鉄道離れをどうやって防ぐのか


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2020年、コロナで急激な鉄道離れが起きた

課題・・・増え続ける自動車利用者と、加速する鉄道離れ

近鉄は大阪府・奈良県・京都府・三重県など広い範囲をエリアにしていますが、奈良県や京都府、三重県など、大阪から離れた郊外からの鉄道利用者が徐々に減ってきています。

 

これは、団塊世代の退職や、子供の人口減少による通勤・通学利用が減ったことに加え、京奈和自動車道や南阪奈自動車道、第二京阪などの自動車道や幹線道路が続々と開通したことで、自動車での移動時間が短縮され、電車から自動車へ切り替える人が増えているからです。

 

さらにコロナの影響で、自動車通勤に切り替えている人も増加しています。また、コロナ禍で懇親会が減り、電車を利用しない人も増えてきています。在宅勤務も増加してきています。電車の通勤手当も支給停止されている会社も出てきています。今後、京奈和自動車道などが全線開通すると、さらに自動車利用が加速していくと思われます。

 

また、鉄道駅周辺から離れた場所での新しい住宅が増加しており、若い世代を中心に、鉄道に依存しない生活スタイルも定着してきています。

 

・・・確かに、高速道路ができて、郊外に車でしか行けない大規模ショッピングモールができて、大阪の中心部への通勤をしなくてよくなれば、電車が生活から不要になってしまいますね・・・。

 

奈良県を例にして、具体的に対策を考えてみたいと思います。

 

電車と自動車のガチンコ対決・・・「速く」「安く」「楽チン」は?

自動車よりも電車の利用にメリットがあれば利用者は電車に戻ってきます。ただ、自動車利用よりもメリットを訴求できなければ、膨大なインフラ設備を一手に担っている鉄道のお先は暗いこととなります・・・。

 

例えば、自動車を利用するよりも、電車の方が「コスト高い」「時間かかる」「座れずしんどい」「行きたい所/行きたいお店がない」「駅まで遠い/駅に車が停められない」「荷物が大変」だったら・・・あえて電車は利用しませんよね。

 

まず、目的地が、電車で行けない所だと、そもそも鉄道に勝ち目がありません。そうなると、目的地は鉄道で行ける場所に限られてきます。郊外の巨大ショッピングモールに行くために電車は使われないのです。そうなるとおのずから目的地は「都市部」に絞られてきます。

 

目的地の観点

目的地 交通手段
都市部(大阪市内など) 電車利用 か 自動車利用
郊外・大型ショッピングモール 自動車利用

 

電車を利用しないことを前提にした大型ショッピングモールが郊外に増加してきていて、都市部へ行かなくてもお買い物や食事、行楽、イベントなどができるようになってきています。もはや、電車は「都市部」に行くときだけしか候補にならない状態となってきています。

 

また、高速道路やバイパス道路も次々建設されており、時間も短縮されてきています。しかも、これまでは電車が優位だった「都市部」でも、駐車場が整備されてきており、徐々に厳しい状況になってきています。

 

 

利用者の観点

利用者 交通手段
郊外への通勤者・買い物 自動車利用
都市部への通勤者・買い物 電車利用(優位) か 自動車利用
学生 電車利用

 

利用者の観点で見ると、「都市部への通勤者・買い物」「学生」に響くような取り組みが重要になってきます。


都市部へ行く場合のガチンコ対決

項目 自動車利用 電車利用
トータルコストは? ガソリン代・高速代・駐車場代
人数が多いと割安(勝ち)
電車代・駅までのバス代
所要時間は? ○時間○分 ○時間○分
座っていける? 必ず座っていける(勝ち) 座れるか分からない(負け)
荷物は? 車で運べる(勝ち) 手で持って運ぶ(負け)
家まで帰れる? 直接家まで帰れる(勝ち) 駅から家までの移動手段が必要(負け)
※駅に車を停められれば、何とか「引き分け」

 

既に、青色の所は自動車利用に軍配があります。「トータルコスト」「所要時間」で勝たなければ、電車利用に勝ち目はありません。最寄り駅に駐車場を用意すること(パークアンドライド)は、もはや鉄道会社の取り組みとしては最低要件です。あとは「安くて」「早い」で勝負できるか、です。

 

現在ギリギリなんとかなっているものの、自動車との競合で危機的状況の一歩手前まで来ていると、鉄道会社は認識したほうがいいと思います。今後、これまでと同じようなことをしていると存続レベルの問題になってしまいます。

★もっとも、公共事業として道路をつぎつぎと建設するのだったら、公共性が高く効率的な鉄道に対しても、公共事業の予算を使って支援(駅前のパークアンドライド駐車場整備、運賃補助、保守費の補助など・・・)すべきだとは思います。交通ということを全体のバランスを見てほしいと、強く思います。#個人的な考え

 

解決策は「自動車ユーザの取り込み」と「特急戦略」

対策案1:駅と直結した大規模駐車場(パークアンドライド)戦略

大阪の都心部への通勤利用では、鉄道利用のメリットが多いのが事実です。ただ、駅近くの駐車場は高く、すぐに満車になるなどで駐車場が使え無い状況です。みんなが駅前に住んでいるというわけでないですし、また急行などが停車する鉄道駅周辺は道路が狭かったり混雑することも多く、駅へ行くだけでも一苦労、という状態です。こんな中、高速道路網が急激に発達してきたので、鉄道を利用せずに直接目的地に行くという選択肢も「あり」となってきています。

 

自動車利用への対策案としては鉄道会社による「パークアンドライド」の強化です。比較的用地スペースがある郊外に戦略的に駅を設置し、駅直結の大規模駐車場を整備することで、自動車で駅まで来て、そのまま電車に乗っていけます。これにより自動車利用者を巻き取っていくことが可能です。また、鉄道会社が駐車場を運営することで、鉄道収入と駐車場料金収入が一挙に得られます。

 

さらに、ショッピング施設を併設するなどで、鉄道収入と駐車場料金収入、さらに購買収入の3つが一挙に得られます。

(電車賃が往復1000円、駐車料金が500円とすると、1人で1500円の収入が新規に入ります。駐車場は止めておくだけで収入が入るので、かなりオイシイ話ではないでしょうか・・・)

 

 

「車で楽して、安く停めれて、電車なので時間も正確。買い物しても車なので楽ちん。雨の心配もいらないよ」

を訴求しなければ、利用者のつなぎ止めは難しいでしょう。

 

具体的に奈良県でパークアンドライドをするならばどこが良いか考えてみました。

 

@近鉄田原本線PARK&RIDE新駅・・・道路アクセスが便利な場所に、広大な駐車場を確保。駅は簡易なホームで構わない。王寺や西大寺・京都方面への利用者の巻取りを実現。田原本線の新規利用者増にもつながる。

 

A八木西口〜畝傍御陵前間の設置予定の新駅(奈良県立医大前):医大駐車場等のスペースを活用し、立体での容量の大きな大規模周辺駐車場を戦略的に整備。なお、駐車場は高田バイパスと直結するなどで渋滞発生を抑制可能。

 

B近鉄郡山〜筒井駅間、近鉄橿原線とJR大和路線が交差する地点(新駅):近鉄とJRのクロスポイントで、今後、新駅設置の可能性も高いことから、早期に周辺地域をP&R可能な駅として整備しておくことが重要です。

 

個人的に、奈良県の場合、「田原本線」の活用がミソと考えます。この沿線には比較的広大な土地も多く、道路のクロス点も多いため、簡易な駅を設置して、大きな駐車場を整備すると、少ない投資で多くの利用者の獲得ができるいいパークアンドライドポイントになれるのでは・・・と思っています。単なる乗り換えポイントなので、立派な駅はいりません。

 

とにかく、パークアンドライドは早め早めにしておいた方がいいと思います。

 

対策案2:通勤・通学で利用しやすい特急に(特急のワナ)

 

近鉄といえば、近鉄特急でしょう。奈良線では難波←→奈良間の特急利用が少しづつ増加・浸透してきています。大阪線でも榛原・桜井・大和八木駅などからのニーズもあります。ただ、近鉄特急は全席満席というケースはレアで「空気を運んでいる」と言われることもあるぐらい輸送力に余裕があるのも事実で、通勤・通学利用での特急はまだ馴染んでいません。ただし、朝・夕のラッシュ時は「正直、安ければ or この駅に停まるなら、特急に乗りたい」と思っている人は結構いると思います。

 

例えば、橿原神宮前〜京都間の急行は本数が少なく混雑してしかも停車駅がやたら多いので、特急が通勤・通学で利用できれば利用者が急増する可能性があります。また、難波〜八木・桜井・榛原間も、特急が通勤・通学で利用できれば利用者が急増するでしょう。

 

通勤・通学利用者から言わせれば、今の近鉄特急は、「高い」「停まらない」「不便」なので通勤・通学には使えず、その割に本数が多く、通過ばかりで迷惑な存在でしかありません。しかし、これから鉄道利用者が減ってくるのに、そのような非効率な運用をしつづけることも、限界になってくるのではないでしょうか。

 

<通勤・通学で利用しやすい特急を>

@通勤・通学利用を想定した特急料金の設定(200円〜300円程度)があれば、結構な人数が特急に流れるでしょう。

A奈良線(朝の奈良→難波)、大阪線(朝の榛原・桜井・八木→難波)・京都線・橿原線(朝の橿原神宮前→京都)など、通勤・通学利用を狙った特急があれば、利用者がかなり流れるでしょう。

B特急は併結運転を増やしていいかも(時間短縮のために幌はつけなくてもいいんじゃない?)

 

一言でいえば、

 

「近鉄特急は、一度乗ってしまうと、クセになる・・・」

 

ということです。特急の快適さを味わってしまうと、ついつい乗ってしまいがちになります。

関東でも、京急がウイング号(乗車定員制)を「+300円」という絶妙な価格設定で運行しています。筆者は京急沿線で住んでいましたが、必ず座れるので、品川からよく利用していました。(当時は+200円でした)

 

あと、神戸方面(尼崎まででも・・・)との特急の直通運転も、今一度検討してほしいですね。意外な特急ニーズがあるかもしれません。

もうひとつは郊外拠点の強化

近鉄の弱点の一つに、朝ラッシュ時の「下り」と夜の「上り」が弱いことがあります。朝は「大阪」「京都」行きは満員になる一方、郊外を目的とする人が少なく、上りが満員、下りはほぼ空車という状態になっています。

「京阪」は大阪と京都、「阪神」は大阪と神戸というように大都市間を結んでおり、双方向の利用が多いことに対し、近鉄は沿線に目立った都市も無いため大都市への片方向になっています。関東では、西武鉄道も似ていますが、西武鉄道は鉄道の拠点クロス駅となる「所沢」の魅力アップに力をいれており、所沢を目的とした利用者も徐々に増加してきています。

大和八木エリアを街ブラ・観光拠点に!

近鉄で重要ポイントとなる鉄道クロス駅は、大和西大寺、大和八木、橿原神宮前、生駒などがあります。それぞれ路線同士がクロスしており、多方面と接続しています。特に、近鉄奈良線・京都線・橿原線がクロスする「大和西大寺駅」は、リニューアルで駅ナカが強化され、周囲にデパートやショッピングモールがあり、駅前も再開発で整備されており、にぎわいが出てきています。西大寺は近鉄で一番重要な郊外拠点でしょう。

 

次に重要拠点となるのが「大和八木周辺」エリアです。近鉄大阪線と橿原線がクロスする駅です。大和八木駅は大阪からは30分、京都からも特急で1時間程度、三重や伊勢方面からのアクセスもいい所です。

 

しかし、現状、駅前は少しさみしい印象となっています。駅前は最近再開発され、立派なバスターミナルができましたが、お店等が撤去されたため、少しガランとした雰囲気になってきています。近鉄百貨店はあるのですが、利便性の割には乗降客は少なく、乗り換えだけの駅になってしまっています。

駅を出ても奈良医大やイオンモールへ行くバスへの乗り継ぎ程度で、交通の便が良い中核駅とは思えない、もったいない状態となっています。

 

この大和八木駅周囲は、歴史的街並みがあるなど観光資源にも恵まれていて、少し歩けば、藤原京跡もあります。

八木西口駅は2021年現在、医大前駅の建設に伴って、廃止の話がでていますが、逆に観光拠点の入口駅として、逆に面的な展開では中核となると考えられるので、大切にしておいたほうがいいと思います。事実、八木駅と八木西口との間の商店街では、にぎわいが少しですがとり戻してきています。

 

大和八木エリアを集客できる場所にするためには所沢を参考にすると

さらに観光資源を生かして

を進めることが重要になると考えています。

 

八木西口駅周辺には、今井町などもあり、八木と八木西口駅をうまく使って、面的に拠点とすることがよいのでは、と思います。

 

まとめ

これから鉄道利用者は減少していき、さらに自動車利用者が増加していく傾向がすでに見えてきています。特に人口の減少・高齢化が進んで来ている奈良エリアは、早めに手を打たないと、誰も鉄道を使わなくなるということになりかねないです。

 

パークアンドライドの整備は、時間がかかるので、すぐにでも行わないと、手遅れになる可能性があると思います。

 

さらに、今後、近鉄にやってくる大きな課題は、JR奈良線の複線化工事対策。奈良〜京都間の勢力図が急にごろっと変わってしまう可能性があります。

いまは近鉄優位ですが、JRが京都・奈良・天王寺間で特急を運行したり、新幹線とセットにした施策などが始まると、奈良への観光客需要の大半をJRに奪われるかもしれないです。飛鳥や吉野、西ノ京、平城京、橿原、今後は藤原京など、近鉄でしかアクセスできない観光地へのアクセスで先手を打っておくことが重要でしょう。

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