「コッコさん」って、なにもんやー?
このゲームの主人公でもある「コッコさん」なんですが、この
にわとりは、実在していました。
[一章 250円の出会い]
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舞台は大阪の下町、東大阪市の花園という超過密の町です。
これはさかのぼること、数十年前のお話です。(1984年)
私が小学2年生のちょうど6月ごろ、貯めた小遣いを片手に握りしめ、
自転車に乗って駅前のペットショップへ向かいました。
「かぶと虫」を買いに。
駅前のペットショップでは、色々な動物・昆虫が売っていて、
「かぶと虫・・・・500円(オス)
300円(メス)」 と、ありました。
私の予算はちょうど500円。 しかし、ふと隣を見ると
「ひよこ(めす)・・・250円 大きくなったらたまごを生みます」
と、書いてありました。今もケチですが、当時もかなりのケチ。
『昆虫が500円もするのに、鳥類が250円なんて、絶対得や!」
おまけに、「めす」とかいてあるし、たまごを生んだらすごいぞ!』
この当時、まだ発行されたばかりの500円玉をお店の人に渡して、
250円のお釣りをもらいました。
[二章 お持ち帰り]------------------------------------------------
自転車のかごに「箱」をのせて、片手でハンドルを、片手で揺れない
ようにしっかりと箱を押さえながらゆっくりとバス通りの道をこいで
帰っていきました。
家に帰ると、もちろん家族は「かぶと虫」を買ってきていると
思っているのに、箱からでてきたものはなんと「ひよこ」!
「えっ・・ あんた、かぶと虫買ってきたんとちゃうん?」
「いゃ、かぶと虫500円もして高かって、その半額でひよこ
売ってたから・・・」と、私。
「なにもひよこを買ってこやんでも・・・、で、オスやったら
大きくなったらどうしようもないで」
「これ、メスやで!」と、私は得意気に答えた。すると、
「メスなんか250円で売ってるかー?」
結局、素人の目ではオスかメスか分からずに、結論は持ち越される
ことと。
しかし、この時でた結論は、
「どうせ、すぐ死ぬって・・・・」
[三章 オスメス論争]
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結局ひよこは「コッコ」と名付けられました。かなり安易な命名だな。
鳥の成長と言うのは恐いぐらい速く、いつの間にか黄色いひよこは
白いにわとりへと成長して行きました。
トサカは大きく赤く、ノドも大きく垂れ下がるようになりました。
どこから見ても、神社にいるオスのにわとりと一緒の風貌。これで「コケ
コッコー」とでも鳴けば、私はペットショップで騙されて買った事になる。
しかし、鳥でもかわいいもので、呼べば黄色いあの2本足と恐竜の様な
指を振り回して一生懸命走ってきます。 時には飛びついて来て、肩に乗っ
たり、頭に乗ったり。
この「コッコさん」は生みの親ならぬ買いの親の私よりも、いつも家に
いて、世話をしてくれる母に良くなつき、母が呼ぶとある時は近所の屋根
を伝って飛んでき、またある時は庭から2階のベランダまでバタバタと
飛び上がって駆けつけます。
[四章 コッコの仲間と宿敵]---------------------------------------------
さて、オスメス論争の前に、「コッコさん」の変な行動パターンを
紹介しましょう。
家には2歳の弟(今ではもう中学3年だが)がいて、2歳ぐらいだと
お昼寝は必要です。ちっちゃな布団で弟が足を伸ばして寝ていました。
ふと横を見ると、全く同じ格好をして寝ているにわとりが・・・
あの黄色い足をピンと伸ばして、首を伸ばして、上と下から塞がるまぶた
を閉じてぐっすりと。
また、コッコさんは大きな糞をして、通称「バクダン」と呼ばれてい
ました。一度、裏のおばちゃんに「じゃまっ」て靴でけられて以来、それ
からずっとおばちゃんのツッカケに「バクダン」を残していくように
なりました。鳥頭と言うが、なかなかしつこく覚えているものである。
ちなみに、このコッコが怒ると、首の毛を逆立てて手(羽根)を上に
立ててダーっと走ってきます。 足でけるフリをするといつも怒って
足を咬みにきます。
さて、飼っている所は大阪の下町。庭も少ししかなく、家は密集。
道路には車が結構走っています。 ある日、私が学校の帰り道、道路で
車が止まっているな・・・・と、よく見ると道路の真ん中を「コッコさん」
が堂々とトコトコとあるいていて、通り過ぎるまで車が待っていました。
普通、こんな所でにわとりなんて飼うと近所から苦情でも来そうなもの
なのだが、すべて近所の協力のおかげだと感謝しています。
[五章 オスメス論争の決着]---------------------------------------------
さて、やはりオスメス論争の決着は「タマゴ」でした。
ある日、小屋を見るとぽっくりとたまごが落ちてありました。 嬉しく
なって母に教えにいっても
「あんた、冷蔵庫のたまご置いたんちゃうか〜?」
と、信じてくれない。 確かに、無雑作に小屋にたまごが落ちていると
不自然である。
でも、それから毎日産む産む!
「やっぱり、騙されてなかった」
たまごの味はと言うと、これがまたオイシい!あんだけ自由気ままに
走り回っているにわとりのタマゴならでは。
もちろん、食べているものがチトちがう。うらのヨッちゃんが
庭で見つけた「ナメクジ」に、一杯塩をつけ消滅しかかったのを
「コッコさん」が食べる。 また、大量のイトミミズもパクパク食べる。
残飯も食べるし、おにぎりも横からついばむ。 ほぼ雑食である。
一応、基本の食事は「にわとりのエサ」である。ヒマワリの種にアワと
麦が入っている物だったような気がする。
ちなみに、「塩をつけたナメクジを食べた後のタマゴは辛い」という
説も流れたが、確認はできなかった。
[六章 別れ]-------------------------------------------------------------
たまごを産み始めてから2年の月日がたった。 小屋は足こぎミシンを
改造したものから、タンスを改造したものとなり、だんだん立派になって
いった。もちろん、毎日ワガモノ顔で屋根から屋根、道路を走り回っている。
至るところ「バクダン」だらけ。相も変わらず元気である。
しかし、別れは突然やってくる。 冬の朝、コッコさんは死んでいた。
イタチに殺られたのだ。しっかりとフタをしていたのだが、イタチの方が
ウワテだったようだ。こんな町中にイタチがいるのには驚いたが、数日前から
視察をしていたようだった。
ショックで泣きそうな私に対して、父は元気づけるために私に、
「たべよか?」 おぃ。
(「コッコさん物語」おわり)